永代橋の景観
第八回 藤沢周平的市井人情町巡り

藤沢周平の『橋ものがたり』(bk1)を久しぶりに読んだら、ふと門前仲町へ出かけたくなった。幡ヶ谷から渋谷、魚藍坂下、東京駅丸の内口を経由して、4本の都営バスを乗り継いでおよそ2時間近くかけてようやく永代橋を越えることができた。これだけ乗っても一日乗車券があれば¥500で済んぢまうから楽でいい。時間はかかりますが。

今日はココ門前仲町にある甘味処『いり江』という店であんみつを食べようと思っていた。アーケードが広がる永代通りを一本、向こうに入った路地にあるのだけど、なんと休業。日曜は定休らしい。日を改めましょ。気を取り直して、道を引き返し、橋の欄干まで来てみた。
ゴマキ まったりと
無責任に漂う空き缶の中に
独つだけ所在なさげに浮かぶボトル瓶

もしや誰かが込めたメッセージが入っていて
わけありな事情だとかが書かれていたら・・・

そんな市井人情物を地で行く勝手な空想を
しばしの間愉しんでみた
 
町歩きエッセイ『極私的東京。』タイトルロゴ
掛線
 
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ここは柳葉敏郎が出ているCM「AFLAC」で使われてる場所でもある。さてさて、藤沢周平の『橋ものがたり』。
これは、橋を舞台にした市井・職人人情物の作品集。この永代橋も佳篇『川霧』に登場する。佐賀町寄りの欄干に立つ「わけあり」な女おさとと、蒔絵職人の新蔵が、朝早い永代橋の上で出会う話である。ここで何枚か撮った後、再びアーケード商店街へと。

清澄通りを真直ぐ上って、小名木川へ行く途中、清澄庭園の横にある清澄公園で一息。右写真にある梅の木はそこの広場の真ん中にデーンと立っている。そしていざ萬年橋へ。僕はまたもや藤沢ワールドへ入り込んだ。『約束』という佳篇の舞台である隅田川に程近い萬年橋。歳月を経てお互い「大人の苦労を味わった」二人が、五年越しの約束の再会を果たす場所だ。中原中也の詩にまで思いを巡らす方もいるかと思うが、藤沢は作品の中で「人間が変わっちまったわけじゃない」と優しく諭している。ちなみに、橋の手前では松尾芭蕉が腰を下ろして休憩している。

小説に出てきた場所を訪れてみるという行為はよくあることで、読者が実際にそこへ訪れて何かを感じてもう一度作品世界へ帰ってくるという仕組みは、実にインターネット的なことだと気がつく。

何か言いたいことがあるから作家は作品を作り、その何かを、作品を通して受け取るからこそ読者も動きたくなる。読者は外から内へ入った積もりが、内から外へ向いてしまう(思いのベクトルとして)。インタラクティブというのはおよそこのへんの「相互作用」ということで、つまり小説はインターネットよりもずっと昔からインタラクティブだった。形が変わってもやってることは一緒なのかもしれない。活字離れが進んでも、その本質まではそう簡単に見失えないということか。新しいことをするっていうのは思ってる以上に難しいのですね。

 
ウメ 萬年橋
ウメと少年野球団
 
今回の散策マップ

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