vol.49 東京縦断バス乗りつくしの旅[夏編]3「東白鬚公園〜池袋〜渋谷」


無気質な団地、そしてヒマワリ

草24系統で亀戸駅まで来た。駅から東へ少しゆくと亀戸サンストリートがある。ランブリング・マーケットという形態のショッピングモールで、中央にはイベントスペースとして使われる広場がある。ここで去年はBuzy(ビズィー)というダンス&ボーカルユニットのライブを観に何度も足を運んだ。この亀戸サンストリートの脇に伸びる遊歩道を南へまっすぐ下ると、学生時代にアルバイトをした経験のある郵便局がある。この亀戸周辺に足を運ぶようになったのはこの1〜2年。駅前にはほとんど来た事がないが、いつか亀戸餃子を食べてみたい。

ここから今度は向島百花園を目指して里22系統に乗る。予定を一つすっ飛ばしたおかげで、当初のタイムテーブルから10分遅れ程度にまで挽回する事ができた。向島百花園というぐらいだから様々な花で彩られた場所なのだろうと、バスを待ちながら心が咲き踊る。

百花園前でバスを降りると、目の前はもう向島百花園だった。…ただ、入口は見事にここから正反対の場所にあって、どこを通っても百花園の外周をグルっと回らなければならないようだ。ザっと見た感じ、それほど広い庭園ではなさそうだ。

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長き短き甘い旅

ここへ来たのは朝顔があるという話だった。百花園の入口は小さな公園になっていて、ラジオ体操の会場になっている。夏の定番というやつだが、毎日やっているのだろうか。第2体操までやっているのだとしたら、ここの周辺の住民はラジオ体操の習熟度がかなり高いのではないだろうか。

入場料を払って中へ入る。右手に「きょう咲いている花」という札がかかった板があった。
「あ…あさが…アレ?」
朝顔が見当たらないがどうしたのだろうと思ったが、ひとまず中へ進む事にした。左から時計周りに進む。ところどころでアジサイがまだ色付いていた。アジサイスポットとして有名な場所ではないのかも知れないが、ここも悪くない。

年配の観光客の団体がコンダクターと思わしき人に説明を受けている。ヘチマの花が夏の日差しに鮮やかな紅色を向けている。とにかくいろんな花にカメラを向けたが暑くて仕方ないので、園内中ほどの池のほとりで少し涼をとる事にした。鯉が沢山いて、ちょっとイタズラしたい気分になったので、手をパンパン叩いてみた。食事と勘違いした鯉たちがいっせいに集まってきて口をパクパクさせ始めた。ああ、なんか金持ちになった気分だ(庭で鯉にエサをやる、というのは何となく金持ちっぽい)。ゴメンよ。そんなんじゃないんだよ。騒がせて悪かったね。

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一筆書きの夏

都02系統で春日駅まで行き、都02乙系統で東池袋四まで行く。護国寺のそばのラーメン屋を車窓から見て懐かしい気分になる。学生時代、護国寺の辺りにある寺の檀家で掃き掃除のバイトをした事を思い出したのだ。確かそのラーメン屋で昼食を済ませた覚えがある。味までは覚えていないが。

そんなこんなで東池袋四に到着した。一応、都営バスだけを乗り継いで、という事なので、次の池86系統渋谷駅行きのバスが最後となる。これに乗れば、いよいよこの旅は終わり。最後は、この旅を無事成し遂げた自分へのご褒美という意味も込めて、よく足を運ぶ東急フードショーのスウィーツゾーンで甘いものを買って帰る、という筋書きだ。ちなみにこのシナリオは特に書き変える予定なしなのだ。

東京をグルっとひと回り、一筆書きで旅をした。一日乗車券を使ってのバス旅も、これほど長く多くの路線を乗り継いだのは初めての事。たったの500円で14回(+最初の京王バス1回)も乗るなんて、都営交通にしてみたらいい迷惑だったろうか。だが、むしろ僕はもっと乗りつくしたいと思っているのだ。

ガタン、という町中では聞き慣れない音に気付いて後ろを振り返ると、都電荒川線が出発しようとしていた所だった。路線図を広げた。都電荒川線の駅もすぐそばだったのだ。ヘッドランプが赤く灯され、暮れ行く町の中へ溶けていった。身体全体に薄らと撒き散らしたような疲労がこのバス旅の長さを物語っていたが、いやむしろそれは心地良くさえあったかも知れない。僕はこの夏の旅を決して忘れないだろう。

そして、また違う旅を求めて路線図を眺めていた僕がいた。18:46。渋谷へ向かうバスがやって来た。今このバスに乗る乗客は僕だけしかいない。

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