vol.47 東京縦断バス乗りつくしの旅[夏編]1「渋谷〜東大島」


その先の東京を見に。

隅田川の上をゆっくり超えてゆく総武伊勢崎線の窓から見えるのは、子どもの頃からいつも見る景色だ。

母の田舎である栃木へ行く夏と正月の年2回の旅。いつしかその旅に同乗する事がなくなっていったが、渋谷区で生まれてもうウン十年。僕にとって東京の最もヒガシは今でも浅草。その先はもう東京から離れた埼玉でも千葉でも、あるいは東京ですらない名もない「何処か」なのだ。つまり山手線の更に外側を走る都営地下鉄で行けるところまでが僕の知る東京。それから多摩も。僕だけの狭い東京の中でグルグルと繰り返すこの景色を、僕は幼い頃からずっと眺めてきた。 そして今日、ついに僕はグルグルの外側へ踏み出す。その先の東京を見に。

…とまあ、堀北真希『NONFIXその先の日本を見に。〜少女と鉄道』風に書き始めてみた。

あと3〜4回でこの『街歩きエッセイ極私的東京。』も通算50回を迎える。そこで今回から3回に渡って「東京縦断バス乗りつくしの旅[夏編]」と称して、都営バスだけを乗り継いで東京のいくつかのスポットを散策する企画をスタートする事になった。この『街歩きエッセイ極私的東京。』を今年2005年に復活させる事になったのも『東京定点観測』という東京の四季を撮り集めるサイトを立ちあげる事になったからこそ、という部分もあった。そこで、この夏の時期に相応しい向日葵が咲いている都内の公園へいくつか足を運ぶ事にした。

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西から東へ。乗りつくしの旅

10:30。渋谷駅前。9:25に幡代のバス停に辿り着いて、9:32に到着するはずの都営バスではなく、それから10分近く遅れてやってきた京王バスに乗る事になった僕は、停留所を3つ過ぎる前にこの短い小さな旅を止めてしまおうかと思っていた。ここ数年の山手通りの工事による渋滞には慣れてたけど、今朝の渋滞には正直ヘコんだ。昨晩、一生懸命作ったバス乗り継ぎのタイムテーブルが目の前のワイパーで何度もかき消されていったような気がした。

だが、そんな渋滞の不安も、代々木八幡の坂を超えると、厚い雲に覆われた空から時折覗かせる晴れ間のように、バスは次第に快適な道のりを進んでいった。

そうして渋谷までちょうど1時間。当初は余裕を持って40分くらいの所要時間を見込んでいたから、ザっと20分押し。魚藍坂下に11:00。これに間に合わない可能性が高かった。もし間に合わなかったら、大島小松川公園のひまわりを撮影するのは止めにしようと決めた。

魚藍坂下に到着したのが11:00ちょうど。奇跡的にバスは5分ほど遅れていた。万が一東急バスの方が来てしまった時のために近くのストアで買い物をして小銭に崩していたらすでに東京駅丸の内南口行きの東98系統が今や出発しようとしていた。僕は急いでバスに駆け寄ってドアを開けてもらった。タイム・ロスを一気に帳消しだ。11:28に北口から東22系統に乗らなければならない。日比谷辺りはよく混むので少なくとも25分はかかる。急げ。
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夏空イマジネーション

東京駅到着。急ぐ、急ぐ。何やらドラマの撮影に通りかかったみたいだが、停留所のある北口へ急ぐ。…しかし寸でのところで間に合わず。次のバスは20分後。まーたロスだ。

東京駅丸の内北口発20分押しで乗ったバスは日本橋を抜け、永代橋を超えようとしている。下町の入り口。藤沢周平ワールドの入り口である。永代通りを左に折れて四ツ目通りに入った。終点の錦糸町へ目と鼻の先にある住吉駅前に到着した時、何となく抱いていた僕の悪い予感は当たってしまった。まーた、目当てのバスが来ない!

これで大島小松川公園のひまわりは陽炎の中へ溶けていった。そもそも11:51に住吉駅にいなきゃいけないのに、東京駅を出たのが11:48ころなのだから、むべなるかな。錦28系統で第五大島小に着くのが12時ちょい過ぎという予定だったが、住吉駅から乗りつげたのが丁度そのくらいの時刻。第五大島小で止まった瞬間、右を見やりながら無念を悟った。東大島駅に到着次第、僕は草24系統で亀戸駅を目指す事にした。

大島小松川公園のひまわりはバス停の先の、フェンスの向こうだ。向こうに花開いているであろうヒマワリの黄色を目ぶたの裏に一杯塗り潰していった。「こんなにそばにいるのに、こんなに遠い」。誰かの歌の詩のような事を独り言でつぶやいてみた。そして、すぐに旅は続いた。

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