vol.39 目黒〜中目黒「山手横断、肉まん散歩」
chapter1
目黒川のほとりで

目黒にやってきた。
…といっても、この散歩は今を遡ること1年2ヶ月。なんと2004年2月22日、日曜日の出来事だ。『極私的東京。』第38回で2003年夏に京王多摩センターへ訪れてから半年、更に1年。実に1年半ぶりにこの散歩を再開した。以前と違っていたのは、首から下げるカメラがFinepix1700ZからC-5050Zへと変貌してだけで、何気なく散歩に選んだ町の基準は昔と全く変わらず、ふとした気持ちからだ。写真だけ撮って、気が向いたら掲載しようと思いつつ1年たってしまった。でも、この日の散歩はよく覚えている。

まだ寒い冬の日曜日、僕は目黒川のほとりを歩いていた。

駅前から下る坂は権之助坂。『タモリのTOKYO坂道美学入門』によると、この坂は江戸時代の名主権之助が私財を投じて作った坂だそうだ。

ここから先へ延々と伸びるのが目黒通り。おしゃれなインテリア家具の店が点在する通りだが、家具にこだわる趣味がほとんどないので、自分には割と縁遠い場所ではあった。僕は椅子やタンスよりもむしろコップや皿の方に興味を持つタイプなのだ。ロイヤルコペンハーゲンのブルーフルーテッドは持ってないけど、デシレの皿やマグカップは作りが男っぽくて愛用している。
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chapter2
目黒五十番のしいたけ肉まんが旨い

途中、山手通りの交差点でコンビニに立ち寄ってコーヒーとタバコを買った(その後、30歳になったのを機に禁煙した。2005年4月現在、記録更新中)。

タバコをくわえながら、コンビニ入口で一度手持ちの地図を広げて、現在位置を確認した。後ほど、この山手通りを横断して目黒川沿いを中目黒駅前へ目指して歩こうと計画していたのだ。

その道中の寄り道先に『目黒五十番』という肉まんの専門店があった。神楽坂にもあるが、そちらへは学生時代に一度も訪れた事がなかった。…冬といえば肉まんじゃないの。長い目黒通りをひたすら進みながら白くて丸くて温かいものを頭に思い浮かべていた。

しばらく歩いた。赤いひさしが見えてきた。赤地に白く「肉まん」と書いてあった。あれだ。風がすごく強い日で。店の前には客が一人もいなかった。ついに来たな、という印象。3つか4つ買おうと意気込んでいたが、店頭で実物を見ると、その考えを改めさせられる事になった。デカかったのだ。しかも、すべての肉まんが吹かしたての状態でテイクアウトできるわけでもなかった。結局、「肉まん」と「しいたけ肉まん」の2つを購入した。比べたら失礼かも知れないが、コンビニの肉まんなど足元にも及ばないボリュームだった。
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chapter-3
路地裏の向こう

『目黒五十番』の右にある路地へすぐ入って、早速「しいたけ肉まん」を包みから出して頬張った。…クゥ、旨い! 肉としいたけの相性は本当に抜群だと思う。幸い、路地には全くといっていいほど人影がなく、歩きながら肉まんを食べても一目をはばかる心配などいらなかった。強烈な風も家並に守られる感じで、快適そのもの。時折立ち止まって、地図で現在位置を再確認する。こういう時は、進んでいる方角だけチェックする。あとは、どの道を選ぼうが気の向くままに。

しかし、やがて山手通りに出ると、そこからは向い風との孤独な戦いが待っていた。早く目黒川流域を目指して、信号を駆け足で渡った。建物の合間から目黒川が見える。ひとたび中へ入って川沿いに来ると、再び穏やかな散歩が始まった。ただ残念ながら、手にした肉まんはすっかり熱を失ってしまいつつあった。

中目黒GTが目と鼻の先くらいの場所まで来て、足を休めた。残ったもう一つの肉まんはあっという間に口へ飲み込まれていった。あと1ヶ月もすればこの周辺には桜が咲き誇る。賑やかで華やいだ目黒川になる前の、静かな景色をしばし眺めた。

ここ数年、東京の外へ出て、海ばかり見ていた僕は、しばらくぶりに都内の散歩を愉しんだ。まさかこの時、再び東京散歩を始めるまで1年も待つとは予想だにもしていなかったのだけど。

というわけで、『極私的東京』、再開です。
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