第三十六回 石神井公園の6時頃
あるゲームに出てくる駅前の背景と同じではないかと思われる場所が西武池袋線「石神井公園」北口にあるという情報をネットの掲示板で見つけた。
「ゲームの中の・・・」というと敬遠される人もいるかと思うけど、いってみれば小説の舞台になった場所がどこそこに存在する、といった類いのことだと思ってもらえれば幸いだ。というわけで、石神井公園へ出かけてみた。
初めて訪れる場所へ出かける時は適当に口実を取り繕うようことが多い。
お品書き
第一回『浅草』篇
第二回『聖蹟桜ヶ丘』篇
第三回『和田堀公園』篇
第四回『権田原』篇
第五回『参宮橋』篇
第六回『桜上水』篇
第七回『大蔵』篇
第八回『門前仲町』篇
第九回『西原』篇
第十回『お台場』篇
第十一回『高尾山』篇
第十二回『分倍河原(前編)』篇
第十三回『分倍河原(後編)』篇
第十四回『渋谷区本町』篇
第十五回『初台』篇
第十六回『善福寺川緑地』篇
第十七回『九品仏』篇
第十八回『等々力渓谷』篇
第十九回『笹塚』篇
第二十回『幡ヶ谷』篇
第二十一回『代々木』篇
第二十二回『谷中』篇
第二十三回『巣鴨』篇
第二十四回『雑司ヶ谷』篇
第二十五回『明治神宮外苑』篇
第二十六回『光が丘公園』篇
第二十七回『立会川(品川区)』篇
第二十八回『高井戸・浜田山』篇
第二十九回『日野』篇
第三十回『日野橋(前編)』篇
第三十一回『日野橋(後編)』篇
第三十二回『夢の島マリーナ』篇
第三十三回『京王永山(前編)』篇
第三十四回『京王永山(後編)』篇
第三十五回『根津』篇
第三十七回『表参道(同潤会アパート)』篇
第三十八回『京王多摩センター』篇
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あるテーマをもって出かけて、そこでいかに本筋から逸れてゆくかを愉しむのが好きだからだ。
当然、面白くなることもあれば、ガッカリすることもある。それは、その場所に想像していたほど感銘を受けなかったからではなく、多分何か他の要因によってもたらされることが多いからだろう。その分、そういった時のショックは大きいが、それも散歩だとも思う(ようにしている)。
まずは駅前で掲示板の情報の真偽をチェック。まあ、似てなくもないが、厳密に言えばユルかった。
済んだら、南口へ回って駅前商店街を抜け、石神井公園を目指すことにした。鬱蒼と茂った緑と水辺。大宮(善福寺)公園や等々力渓谷といった流れを想像してみる。
坂道を下った先にある公園入口から外周に沿って歩いてみる。すぐに目に飛び込んできたのは石神井池で釣りをする人たちだった。釣りができる公園、というのは珍しい。というか、何処か違和感がある。しばらく様子を伺っていると、この池では鯉が釣れるらしい。鯉って、観賞するものであって、釣るものではなかったと思うのだが・・・。
よく見ると「大人の釣り禁止」とあるが、釣り糸を垂らしているのは8〜9割方が大人。参ったのは、鯉を釣り上げた初老の男性が、釣り針を除く際に鯉の目を親指で押しつぶしていたという現実。傍で見ていた女性もしきりに目のことを口にしていた。最初は見事な鯉に足を止めてみたものの、これ以上シャッターを切り続けることは出来なかった。鯉はその後、池に投げ帰された。これが何を意味するのか僕はすぐに気付いたが、理解はせずに後にした。
公園内を進み、三宝寺池をぐるっと回った後、ネコをからかいながらベンチで決まりの悪い一服を吸った。石神井公園の6時をさす独特なアナウンスが聴こえてきた。