日野橋を臨む
傘ゴルフのお父さん
第三十一回 Our Theme

この日はとても風の強かったが、風の中に硬さのない、とても春めいた、柔らかな晴れた日だった。

あの日、ココで土手に下りた直後に降った夕立ちの立ち篭める匂いは、草いきれに混じって、蒸せるようだった。改めてココに来た時に振り返った土手の高さ。あの時は今よりずっと高く見えた。

雨の中の帰り道は、あっという間だった。
時間は止まっていたかもしれない
極私的東京百景認定029
掛線
日野橋(後編)
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壊れた自転車

僕の家に着いたあと、部屋で、ビショ濡れの体をタオルで拭いていた僕らの話題は、ウォーターハイドの中、ダンプ車と時速40kmで平走したこと

そして、僕らは真っ赤なラジカセでサザンオールスターズを一緒に聴いた。


以来、Sと一緒に日野橋へ行くことはなかったが、あの日の出来事は僕らの友情をつなぐには十分だった。

何も今日、日野橋へ来る理由もなかったし、あえて出かけるなら11月15日にすべきなのかもしれなかった。
今年で三周忌を迎える、彼、Sの命日だ。
ここで亡くなったわけではないけど、遺族の意向で目立った葬式も上げなかったので、しいて選ぶならここだろうかと思ったのだ。

日野駅から甲州街道を東へ12分ほど歩くその道中に小さな花屋があったが、ガラではないなと思い、買わずに通り過ぎた。それはいいが、やはりこういうのは命日じゃないと意味がないのだろうかと、しばし悩みながらブラブラと歩いた。

とある健康上の理由から、タバコを止めて5ヶ月ほど経っていた。しかし、今日一日だけそれを解禁することにした。
土手に下りて、僕は久しぶりに、駅前で買っておいた、マルボロライトに、慎重に火を付けた。翌日に伝えられることになるニュースよりも本当は一日ばかり早かったのではないかと思われるこの強い風は多分、春一番だったんだと思う。

冒険とミステリーが同居する一瞬
あの日の土手




中学に入学してからいわゆるロックやポップスに目覚めていったが、中でも一番好きだったのはサザンオールスターズ。今でも一番好きだ。

『ByeByeMyLove』のイントロを口ずさんで「この曲知ってる?」が親友Sとの合い言葉だった。