僕の家に着いたあと、部屋で、ビショ濡れの体をタオルで拭いていた僕らの話題は、ウォーターハイドの中、ダンプ車と時速40kmで平走したこと。
そして、僕らは真っ赤なラジカセでサザンオールスターズを一緒に聴いた。
以来、Sと一緒に日野橋へ行くことはなかったが、あの日の出来事は僕らの友情をつなぐには十分だった。
何も今日、日野橋へ来る理由もなかったし、あえて出かけるなら11月15日にすべきなのかもしれなかった。
今年で三周忌を迎える、彼、Sの命日だ。
ここで亡くなったわけではないけど、遺族の意向で目立った葬式も上げなかったので、しいて選ぶならここだろうかと思ったのだ。
日野駅から甲州街道を東へ12分ほど歩くその道中に小さな花屋があったが、ガラではないなと思い、買わずに通り過ぎた。それはいいが、やはりこういうのは命日じゃないと意味がないのだろうかと、しばし悩みながらブラブラと歩いた。
とある健康上の理由から、タバコを止めて5ヶ月ほど経っていた。しかし、今日一日だけそれを解禁することにした。
土手に下りて、僕は久しぶりに、駅前で買っておいた、マルボロライトに、慎重に火を付けた。翌日に伝えられることになるニュースよりも本当は一日ばかり早かったのではないかと思われるこの強い風は多分、春一番だったんだと思う。