第二十八回 真っ赤なラジカセ
第十九回『笹塚』編
で、小学三年の頃、笹塚駅前で自転車を盗まれたことを書いた。あの話には実は続きがあって、その自転車を後日返却してもらいに親と浜田山まで出かけることになったのである。
何故浜田山だったのかは、今でもよく判らない。代々木署で返ってくるハズの僕の自転車は、どういうわけか京王井の頭線浜田山駅から10分ほど歩いた井の頭通り沿いにあった高井戸署で受け取ることになったのである。
お品書き
第一回『浅草』篇
第二回『聖蹟桜ヶ丘』篇
第三回『和田堀公園』篇
第四回『権田原』篇
第五回『参宮橋』篇
第六回『桜上水』篇
第七回『大蔵』篇
第八回『門前仲町』篇
第九回『西原』篇
第十回『お台場』篇
第十一回『高尾山』篇
第十二回『分倍河原(前編)』篇
第十三回『分倍河原(後編)』篇
第十四回『渋谷区本町』篇
第十五回『初台』篇
第十六回『善福寺川緑地』篇
第十七回『九品仏』篇
第十八回『等々力渓谷』篇
第十九回『笹塚』篇
第二十回『幡ヶ谷』篇
第二十一回『代々木』篇
第二十二回『谷中』篇
第二十三回『巣鴨』篇
第二十四回『雑司ヶ谷』篇
第二十五回『明治神宮外苑』篇
第二十六回『光が丘公園』篇
第二十七回『立会川(品川区)』篇
第二十九回『日野』篇
第三十回『日野橋(前編)』篇
第三十一回『日野橋(後編)』篇
第三十二回『夢の島マリーナ』篇
第三十三回『京王永山(前編)』篇
第三十四回『京王永山(後編)』篇
第三十五回『根津』篇
第三十六回『石神井公園』篇
第三十七回『表参道(同潤会アパート)』篇
第三十八回『京王多摩センター』篇
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僕の7段ギア付き自転車を盗んだ犯人は、すでに九州に引越しをした後で、盗んだ僕の自転車までも九州へ持って行っていた。その几帳面な性格が災いしたというか、しっかりとアシを付けることになったのである。
18年前のエピソードとはいえ、さすがに警察署が移転しているとまでは思わなかった僕は、風の強い井の頭通りを何度も往復するハメになった。警ら中のおまわりさんがいたのだが、警察の場所を訊くというのは、どことなく自分が何かしでかしたように思われそうで訊きづらいものだ。2回目にしてようやく訊ねたところ、環八の先、宮前1-17に移転したのだという。ここから6〜700メートル先へ目指して歩くことにした。
浜田山駅前の商店街は比較的幅広な道幅を確保しており、落ち着いた雰囲気のする町。「すぎ丸」という可愛らしい循環バスなどが止まっていたりもする。
自転車を引き取りに訪れた日、この商店街で真っ赤なラジカセを買って帰った。さっき浜田山に着いてから商店街を往復した時、残念ながら買ったその店は見当たらなかった。それ以来のことだから、この町が18年でどれだけ変わったのか知るよしもない。
町の移り変わりに気をとめるのが散歩の醍醐味の一面だけど、実はその町がどう変わっていったのかさえ知れないで訪れては歩いていることのほうが、圧倒的に多いと思う。自分にはどうしても
その変化を分かれない時
、僕はこうして自分の思い出を頼りに歩くようにしている。
今、僕がこの町で頼りにしているのは、あの自転車と、真っ赤なラジカセだ。もうすぐ環八が見える。