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ていた。ここの檀家はとても広いのだ。僕は、自分が8年前に、どの場所でホウキを忙しく動かしていたのか、すぐに思い出すことができた。ここに大きなゴミ箱を置いて・・・、ここで手を洗って・・・、ここで叱られて・・・。いい想い出だ。
カメラを持って墓石の並ぶ方へ歩き出すのはもちろん僕しかいなかった。湿気で蒸した曇り空の下で、時折冷えた空気が首筋を走り抜けた。
やっぱり気になる。
想い出の中から引き出した一枚の絵を、必死に風景と重ね合わせながら、その「ズレ」を修正するように僕はこの寺の参道を歩いていたことを、今一度思い出した。参道の入口から向かって右側に、その名も「参道」という、いい味を出した甘味処があったのだ。僕はここへ行きたかった。確か、このあたり・・・
しかし、いくら探しても店は一件も見つからない。紫陽花にファインダーを向け続けていた僕の気持ちは、再び浄真寺の方へ向き直した。思いきって訊く。
「あの・・・確かこの参道に甘味処があったはずなんですが・・・」
「潰れた。2、3年前だったかなあ・・うん」
「・・・そうだったんですか」
住職とは、それ以上やり取りしなかった。8年も時が流れていたことを改めて実感した。帰りがけに「今度寄ろう」と思ったきり行けずに終わってしまった。しばらくして、小糠雨が降り始めた。
(ここに掲載されたもの以外の写真はこちらへ)
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