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第十四回 幻のカツ丼

地元といっても、本町4〜5丁目あたりは、もう10年くらい来ていなかったような気がする。なんで来なかったかは判らないけど、大学に入ってからはサークルなどが生活の中心になっていたせいだと思う。いい機会だから、ゆっくりと歩いてみた。本町四丁目には酒呑地蔵尊というのがある。本町小学校のとなりだ。横の遊歩道は昔、川で、ここで溺れた酔っぱらいを供養し、これ以上溺れる酔っ払いがでないように、と祀られたのである。

僕がこの町にある本町中学校へ通っていた頃、僕らの間で伝説級の評判を迫していた「やまもと」という定食屋があった。そこで食べさせてくれるカツ丼、通称「やまもとのカツ丼」は、絶品だった。前に食べたのはいつのことだろう。当然、僕は「やまもと」を目指して歩いた。嬉しいことに「やまもと」は今でも営業中。看板はなく、入口にポツンと表札のように「やまもと」とあるだけだ。
日曜午後2時ということで、客は誰もいなかった。当時とかわらない様子の店のおばさんにカツ丼を注文した僕は、壁のメニューに目を向けた。値段が当時と変わってないところがスゴイ。値段はどれも手ごろだが、なぜかカツカレーだけが頭一つ抜きん出た値段設定という判らなさが面白い。しかも、よく見ると、「レー」と伸ばすところが、アルファベットの「I」になっているところも見逃せない。怪し気な電子レンジの音を2回聴いた後、僕はカツ丼を食べた。ここのは「カツ煮」でないところが○。玉子の半熟加減はどこにもないオリジナリティがある。

店を出た後、中学時代によくたむろした公園へ。この側にある渋谷区民施設では、片瀬東浜の国民保険海の家のタダ券がもらえる。今でももらえると思う。中学一年から僕は毎年利用していた。今年あたり、久しぶりに使ってみようか。

不動通り商店街へ出た。中学時代、僕は友人と「笹金」という肉屋で4本\200の手羽先を買って、よく食べた。これがマジで旨い!ママチャリで流すと友人を次々に拾ってゆき、いつの間にか7、8台の集団になる僕らは、「笹金」の手羽先で最後を締めるのがパターンだった。途中に通る焼き鳥屋が僕らを見てよく睨むので、「睨み屋」と呼ばれていた。無理もない。僕らはその「睨み屋」から10mほど離れたマンションの前で手羽先の骨を食い散らかしていた悪ガキだったのだ。中学一年、1987年頃の話だ。

僕は記憶の中でタイムトリップしながら、そのまま初台へと流した。(次回へ続く)


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